ー吉野なおさん、本日はよろしくお願いします。早速ですが、現在活動されていることについて教えてください。
「現在は東京理科大学に通う傍ら、IDOL’s NOT DEAD(以下、IND)と目黒川女学館(以下、めぐ女)というアイドルグループで、保健女医というポジションでメンバーのマネジメントを行っています。」
ー理系の学生さんだったんですね!大変ですよね?
「そうですね、今までおろそかにしていたしわ寄せが、きてます。ただ、アイドル活動も含め、私には捨てれないものが出来たので、大学はもう辞めてもいいかなって、ちょっと前から思ってました。卒業してもアイドルとして活動していくって決めましたし。でも、まわりからはあと3ヶ月だし、卒業だけはしときなよって言われますけどね(笑)」
ーまあ、せっかくここまで来たんですもんね。是非、卒業してください。(笑)ご両親は吉野さんの活動には肯定的なんですか?
「はい。両親にも自分のやりたい事を全部話して、理解してもらいましたし、今では応援してくれるくらいになりました。特に母には結構助けられていて。元々美術系の仕事をしていた経緯もあって、衣装とか、ダンスの振り付けとか、そういった面で自分のアイドル活動を支えてくれていますね。」
ーそうだったんですね。ご両親はアイドルとかすきなんですか?
「ん~アイドルというか音楽が二人ともすごく好きで。母はプログレ(プログレッシブ・ロック)が好きで、洋楽ばっか聴いてましたね。父はどちらかというと邦楽に寄ってたのかな。」
ーご両親の影響はかなりありそうですね。そうなると気になるのは吉野さんの『音楽のルーツ』ですが、最初に聴いた音楽はなんですか?
「小さい頃から色んな音楽はなんとなく聞いていたと思うのですが、一番の出会いと言えるのは、小6のときにcapsuleの『NEXUS-2060』で、そこから自分の音楽の世界が一気に広がりました。当時は周りではORANGE RANGEとかが流行っていたと思うんですけど、自分はあんまりピンと来なくて。へえーこんなん流行ってるんだ、みたいな。でも、このアルバムはたしか『宇宙』がテーマになってると思うんですけど、聴くだけでもうブワァーって宇宙が見えてくるその世界観がすごくて。聴覚だけでなくて視覚にも訴えかけるような、表現としての音楽に衝撃を受けて、音楽に傾倒するようになりました。たぶん音楽のルーツは中田ヤスタカさんにあるんじゃないかな、と思います。」
ーきっかけは中田ヤスタカにあったんですね!そこからアイドルへとどう変貌していったのですか?
「結構長くなると思うんですけど、大丈夫ですかね?(笑)」
ー遠慮なくどうぞ!
「はい(笑)capsuleに出会った直後にTommy(川瀬智子)にハマったんですね。中田ヤスタカとTommyに共通するのって”POPさ”だと思うんですけど、すごくキャッチーですぐに好きになりました。で、そこから可愛い女の子がすごく好きになって。お前本当に四十路かよってくらい川瀬さんは可愛いんですけど、Tommy hevenryのバンドサウンドもかっこよくて、そこから色んな音楽雑誌とかも見るようになったんです。もっと色んな音楽を聴きたい!と思って。で、色々な音楽をジャンル問わず聴いてて。高校入ってからはバンドをやっていたんですけど、その頃はMix Speaker’s Inc.っていうV系バンドにめちゃめちゃハマりまして。今でもライブに行くくらい好きなんですけど、彼らのパフォーマンスは本当にすごいんです!ライブ中は基本演劇みたいな感じで進行していて、ツインボーカルだったり、普通とは違う、しっかりと作り込まれた世界観に、ものすごく憧れがありました。あと、彼らの重い音にもすごく惹かれて。それで、高3くらいから”重い音楽”と”可愛い女の子=アイドル”が、自分の中で音楽のキーワードになりました。自分もあんな風に音楽を表現してみたいって思うようになったのもこの頃です。」
ー(本当はもっと色んなアーティストの話があったが省略。ごめん!)大学に入ってから本格的に自分自身で表現するステージへと行ったということですかね?
「そうですね。ただ、大学受験のときくらいから音楽業界の夢は半分諦めていて。あんまり現実的な仕事ではないじゃないですか、仕事としてもなんか不安定だし。だから当時は医学部を目指してずっと勉強ばっかしてたんです。まあ、結果的に大学受験は失敗して理科大に行くんですけど、大学行ってからやっぱり音楽やりたいと思って、ももクロのコピーダンスサークルを立ち上げて踊ってました。」
ーやはり諦めきれない想いがあったのですね。
「そうですね。それからももクロだけじゃなくて、もっと自分のやりたい音楽で表現していきたいなって思ったときに、ももクロだけではモノ足りなかったので、ジャンルに捕われない形でコピーダンスをするINDをつくりました。」
ー高校時代はバンドで表現していた音楽を、アイドルという形態に変えて行った理由みたいなのはありますか?
「基本的にアイドルってオケ(カラオケ)じゃないですか。バンドは生演奏だから、一人一人が目立ちたい気持ちを前に出してしまうと、音が喧嘩して、どうしてもいい音楽は出来ないんですよね。自分のしたいことは我慢したくないし、表現したいものを100%表現したかったので、結果としてアイドルというスタイルに行き着いた、という感じです。」
ーなるほど、そういった意味で、めぐ女は表現者ではなく、裏方という立ち位置ですが、それは何か理由があるのですか?
「めぐ女自体は清楚みたいなイメージで、自分のやりたいこととは遠い位置にあるアイドルなんですけど、裏方としてめぐ女に携わる意味としては、今後自分がアイドルとしてやっていくときに、全部を知っている方が強いなって思ったんですね。マネージャーの役割はなんだとか、曲作りってどんな風に行われるのかとか、レコード会社とのやり取りってどんな感じだろう、みたいな。そういう部分もすべて理解した上で活動できれば、もっと違う表現の仕方も見えてくるんじゃないかなと思ってやっています。まあ、可愛い子が好きっていうのもありますし、すごく楽しいですよ(笑)だから、いまのポジションも狙いがあってやっています。」
ーしっかりと先を見据えてのことだったんですね!ちなみにアイドルのよさとして、自分のやりたい事を表現できる、ということでしたが、アイドル音楽という表現を通して一番伝えたいことはなんですか?
「ん~色々あるんですけど、とりわけLiveについて言及すると、Liveのいいとこは”その場限りの空間”を共有できることだと思うんです。女の子の成長ってすごく早いし、Liveの楽しい時間も最後の曲を終えればそれで終わってしまう、その刹那的な空間を一緒に作り上げる楽しさが一番のよさだと思うし、それが見に来てくれてる人たちにも伝わればすごく嬉しいなって思いますね。」
ー少し話はズレるのですが、今のアイドル業界って商業的にすごく盛り上がっている一方で、純粋な音楽としての楽しさは歪んできているように僕は感じるのですが、吉野さんは今のアイドル業界についてなにを感じますか?
「んーいまってAKBとももクロの2強じゃないですか。で、他の追随するアイドルはとりあえず武道館やったら、はい終わり、みたいな。あるいはそれ以外のアイドルは、地下アイドルとしてCDに握手券とかドーピングして、少ないファンからとりあえず金取っとけみたいな感じがすごく伝わってきて。つまり、音楽の価値を下げている人が多いなって最近思うんです。CDの価値が下がるし、周りからの評価も下がる。音楽全体の価値が下がってしまうきっかけになってしまっているんじゃないかなって思います。だから、CDの使い方ですよね、あれがおまけになっちゃってるのが今のアイドルにありがちなこと。でもCDって本来アートワークも込みで一つの作品だと思うし、おまけ以外ももっと見て楽しんで欲しいです。」
ー中々難しいですよね、まさに吉野さんがおっしゃるように、今CDの存在価値が問われているような気がします。ところで、音楽のいいところってなんですかね?
「んー、音楽のいいところは裏切らないところですかね。いつも変わらずに接してくれる。人はそのときそのときで気分も違うし、前と同じ態度でいられるなんてことは全く保証されてないじゃないですか。でも音楽はいつも変わらず、同じ態度で接してくれる。だから音楽が好きだし、自分に取ってなきゃならない存在ですね。」
ー吉野さんの音楽に対する愛の深さが感じます(笑)
「はい、愛めっちゃ深いです。だからこそ、自分も同じように人にとって救いのある音楽を作っていきたいなって思います。」
ー中々いまのご時世、音楽業界や芸能界みたいな世界に飛び込んでみたい!って思いながらも、吉野さんみたいに思い切って足を踏み出すことが出来る人って少ないと思うんですね。だから、同じような気持ちを持っている方に、もしアドバイスできる事があれば、ぜひ!
「ん~、そんな偉そうな事いえる立場でもないんですが…。(苦笑)でも、私も本当に普通の人で。昔は特に周りに流されやすいような子だったから、出る杭は打たれるみたいな空気があるなかで、勇気がなくて前に踏み出せない気持ちはすごくわかるんです。ただ、自分の事を応援してくれる人は必ずどこかにいるんだと思います。私自身がそうだったから、それは強く思うんです。だから、応援してくれる人が出てくるまで、一生懸命やる。それだけかなと思います。それでも見つからなくて、どうしようもないときは、私のところに来て欲しいです。同じ気持ちを共有するだけでも、すごく前向きになれると思うので。待ってます笑」
ー素晴らしいです!なんだか僕も勇気を貰いました。では最後に、今後の展望を聞いて終わりにしたいと思います!
「そうですね、INDの活動はコピーのみですが、これからも活動していきたいなと思います。目黒川女学館はこれからライブもたくさん入って、より活発になると思うので、彼女たちの裏方としてサポートしつつ、自分のやりたいこともどんどん表現して行きたいなと思います!」
ーありがとうございます。僕も応援しています、頑張ってください!
「はい!頑張ります!ありがとうございました。」
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